| 19:絵を描く |
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時々訳が分からなくなる。 自分はどうして今、ここに居るのだろうか。 自分はどうして今、こんなことをしているのだろうか。 でも、自分の中から沸き起こってくる衝動は、どうしても抑えがたくて、だから、こんなことをしている。 全てを塗りたくって、もとの地を消して。それに何の意味があるのかなんて、余計分からない。 「私、これ、けっこう好きだな」 「は?」 「この絵、私けっこう好きだよ」 「どこが?」 「……あのさ、フツー、自分で書いたものを褒められて、どこが、なんて訊かないよ」 「だったら俺はフツーじゃないんだよ」 「ああ、だからこんな絵が描けるんだね。私、けっこう好きだよ」 放課後の美術室には、自分達しかいなかった。 「また描いてね」 「なにを?」 「こんな絵。いっぱい描いて、で、気が向いいたら私に頂戴」 「持って帰るのが大変だよ」 「そうだね。だったら持って帰れる大きさの何かを頂戴」 「それは物でもいいの?」 「まさか。あなたの絵を、私に頂戴」 絵を描く理由なんて、いつも分からない。 一度も、分からない。 |
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